疲労困憊、昼夜続く救助活動

 1万人以上の死者・行方不明者を出したシナガワでの捜索・救援活動は1週間を超えたが、捜索活動終了の目処はまったく立っていない。

現在も、行方不明者が出ている家の瓦礫を除去し、生存者を捜す試みが続いている。だが時間がたつに従って、新たに発見される生存者の数は減っている。

 しかし生存者がいるという望みをまだ捨てきれない以上、慎重にならざるを得ない。そうなると瓦礫の除去は崩落の危険を避けながら、生存者の声に耳を澄ましながらとなるので、作業はなかなかはかどらない。ライフラインを復旧させるにはすみやかな作業が必要だが、行方不明者の家族は、まだ生きている可能性がたとえ1%でもある限りは、捜索を続けて欲しいと願っている。はたして「生存者の捜索」を見限って「復旧活動」に切り替える、非情だが必要な決断はいつ下されることになるのだろうか?


また、この夏の暑さが深刻な問題をもたらすことになると、捜索担当者は語っている。

 「暑さのため、遺体の腐敗が早く進んでしまいます。そうなると、衛生的に危険な状態となります。まだ発見されていない遺体が多数ありますし、遺体が発見されても、身元確認が済むまでは火葬できない。火葬場の処理能力の限界を考えると、発見した遺体はどんどん火葬していかないとならないことになりますが、そうもいきません」

 当然ながら、生き残った人間が今後どのように暮らしていくかも重要な問題だ。とにかく被災者の数が多く、さらに都心に近いということから、仮設住宅の土地確保が大きな問題となっている。政府は、臨時休止となっている遊園地の用地などを臨時に使用することも検討しているが、土地使用料はどうするのか、国防法の土地強制接収を適用すべきかなどで議論が続いている。

 そうやって、政治家や土地権利者が金の話をしている間も、消防の人々や軍人はわずかな出動手当だけで必死に救助活動を続けているが、さすがに疲労の色が濃い。先日も救助活動中の事故により、消防レスキュー部隊隊員2名が重傷を負うという事故も起こっている。そのため、近隣の県から応援部隊を出してほしいという現場の声も上がっているが、「次はこちらに怪獣が現れるかもしれない。そうなったら自分の県に部隊が必要だ」という恐怖が、応援活動の出し惜しみを発生させてしまっている。ボランティアや募金活動などの動きも、かつて発生した自然災害における活動に比べると、その規模はかなり小さいという。

 まるで黒死病が蔓延し、人々が自分の家に閉じこもってしまった時代のようだ。現在、恐怖という伝染病が列島を支配している