シリーズ「頼れるのは自分だけ」 1.女になりたかった男たち

 テレビのバラエティ番組では、必要に応じてさまざまな「キャラ」が求められる。例えば、クイズ番組であれば優秀な成績を収める知性派キャラと珍回答を連発するおバカキャラ。グルメ番組であれば食の薀蓄を語れるセレブキャラとひたすら食いまくるだけのデブキャラが必要になってくる。しかし、どんな番組でも重宝されるキャラといえば「おねえキャラ」を置いて他にはない。見た目はどう見てもゴツイおっさんなのに、態度や話す言葉は丸っきりの「女」。彼らが語る人生観・恋愛観を聞いているうちに、本物の女性に見えてくる、なんてことも……!? そんな“彼女”たちが現在のように世間に受け止めてもらえるまでには、並々ならぬ苦労があったという。

 彼女たちの話を聞いていると、“その道”に目覚めたのはまだ幼い頃であった場合が多い。「初恋の相手は、幼稚園の同級生の○○君」などと語る時の彼女たちは、うれしそうな目をするのと同時に、どこか寂しそうな表情も浮かべているものだ。それもそうだろう。大人になれば「世の中にはそういう人もいる」として理解も出来るが、子供の感覚からすれば「男なのに女」な友達は気味の悪い存在として映るに違いない。本人としてもそれがわからないから、うっかり自分の気持ちをみんなの前で正直に言ってしまい、いじめの対象になってしまったのだろう。だから彼らに共通するのは、孤独な幼少時代の思い出である。常に「他人とは違う自分」にコンプレックスを感じながら、小学校・中学校と過ごしてきたのだ。

 それでも、10代も後半に差し掛かる頃には、周囲の理解者も増え、また自分の得意分野を見つけることで、それぞれの道で才能を開花させることとなる。ある者はダンサーとして、ある者はメイクアップアーティストとして、またある者はお笑い芸人として、日夜マスコミをにぎわせている。彼女らが一様に述懐するのは「コンプレックスが自分を支えてくれた」こと。コンプレックスがあったからこそ、各分野でトップを極められるようになったし、他人から馬鹿にされないよう社会人としての常識やマナーには人一倍気を配って生きてきた。だからこそ、彼女たちの話には含蓄があり、世間に受け入れられているのかもしれない。

 人から見て短所や欠点に見えるようなことがあっても、逆にそれをバネにして強く生きていく。結局、心の持ちようは自分次第。「お姉様」たちから教えられることは案外多いのかもしれない。