集中爆撃も通じず もはや国防軍になすすべなし

 ついに、無人兵器を利用した国防軍による、ロボットへの大規模な攻撃が行われることになった。

 政府の発表と計画通り、エネルギータワーが輝く前に2体のロボットが出現。その時点で、付近住民の避難も完全に完了していた。ここまではシナリオ通りだった。

 だが、状況が変わったのはそれからだ。ロボットの1体、ジアースとして知られている方のロボットは、突然エネルギータワーに対してレーザーのようなものを発射、これを破壊してしまう。タワーにおびき寄せられたジアースが、タワーのエネルギーを敵と判断したのかどうかはよくわからない。

 その直後、ジアースを含めた2対のロボットに対し、無人機による飽和攻撃が開始された。その光景は、どんな映画でも再現できない、記録映像にも決して保存することはできない、本職の軍人ですらどんな実弾演習でも体験したことのない、すさまじい爆発と轟音であった。安全圏とされる場所から撮影していても、多数の爆発の衝撃波がびりびりと伝わってくる。その一帯に小さな太陽が出現したかのように赤々と輝く。鼓膜がおかしくなるほどの爆音が鳴り続ける。

 これほどまでに限定された一点に、これほどまでに多大な火力が集中されることは、人類の戦争を通しても一度もない。なぜならば普通の人間の兵器であれば、そこまで火力を集中せずとも目標を破壊できるからだ。核兵器の爆発以外では、人類によるこれほどの破壊の力が地球に現れたことはないだろう。それほどの火と鋼の大旋風だった。

 だが、それでもあのロボットは破壊できなかった。2対のロボットは、国防軍の攻撃などまるで意に介さないかのように、今までと同じようにお互いを敵として戦った。そして今までと同じように、ジアースのみが勝った。その後、2対のロボットは今までと同じように消え去り、残ったのは国防軍が作り上げた炎と廃墟だけであった。

 事前の避難によって人的損害こそ最小限に抑えられたものの、この攻撃で財産を失った人々の数は知れず、結果として無駄に終わった攻撃について政府の責任を追及する声や、損害の賠償を求める声が上がっている。

 そのうえ、エネルギータワーが破壊されてしまった今、次にどこにロボットが出現するのかもわからなくなってしまった。

 結局、我々を正しく導いてくれる「予言者」はいなかった。またロボットが現れるのか、その時何が起こるのか、ただ我々人類は無力な観客として見ていることしかできないのだ。