ヒューマンドキュメント「国防軍人の奥さまがた」

 「夫の本妻は、飛行機なんです。私は愛人」

 そう笑いながら語る内田めぐみさん(29)のご主人は、国防軍のパイロットだ。

 軍人というものは平時でも、事故に巻き込まれる危険が、一般の職業に比べると非常に高い。特に最近のロボット騒ぎが始まってからは、「戦死」した隊員も多数いる。いつ自分の夫がその仲間に加わるか……そう考えるととても不安なはずだが、めぐみさんは気丈に語っている。

 「夫と結婚することを選んだときから、それらのことをすべて受け入れたつもりでいます。でなければ軍人のパイロットと結婚なんてできませんよ。私と出会う以前から、夫はずっと飛行機に夢中でしたし、今でも仕事であると同時に趣味であり、生き甲斐なんです。ですから『家族と飛行機とどっちを取るの』なんて言えはしませんよ」

 だが、すべての軍人の妻が彼女のように考えているというわけではない。特に海防の軍人における結婚率の低さ、離婚率の高さは大きな問題となっている。護衛艦の航海は数ヶ月に及ぶし、特に海外派遣となるとその期間は更に長くなる。そうなると、どうしても家庭の問題というものができてしまうものだ。家庭問題を抱えている軍人は当然ながら士気が低下するし、また家族のことを優先して、退任する軍人も出てくる。優秀な人材を確保しておきたい軍としては、決して看過できない問題だ。

 そこで軍は帰りを待つ家人に、同じ基地内での家族会参加を推奨しており、同じ悩みを持つ軍人の家族同士が支え合い、ふれ合う時間を作ろうとしている。また基地には心理学などについての講義を受けた軍医などをカウンセラーとして置くことにより、家庭の問題について助言を与えることができるようにしている。

 そして隊員と家族の間で、可能な限りメールやテレビ電話を使ったコミュニケーションが取れるようにも配慮している。この制度は、常に非番の隊員の誰かが端末を使用しているほどの人気だという。海外派遣の時には時差をあわせるため、例えば日本時間が夜中でも、事前に決めた時間に家人が起きて連絡が来るのを待っていたことも多いという。

 紙を使った手紙でしかやりとりできなかった時代に比べると格段の進歩だが、もちろんこれで必ず連絡が取れるとは限らない。PKF活動などでは常に予想外の事件や事故が起こって予定が狂う可能性がある。それに潜水艦勤務の場合、潜水艦が浮上しているわずかな時間しか通信はできず、そのメッセージ量も限られてしまうからだ。

 陸防に所属する夫を海外PKF活動に送ったことがある後藤香さん(31)は次のような話をしてくれた。

 「夫が海外派遣中は、常に連絡を取れるとは限りません。そこで特定の時間を決めて、その時に空を見上げようとお互いに決めたんです。たとえ連絡が取れなくても、『今この同じ空を見上げている』と思うと、何となく繋がっている気分になれたんです」

 このロボット騒ぎが終わるまで、そして終わったそのあとも、軍人の家族の苦悩の日々は人知れず続くだろう。