Staff & Cast
Staff Cast Interview
スペシャル対談<キャラクター編>
前田真宏 松原秀典
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全員が悪役に見える?前田監督のキャラ原案に踏み込んでデザインを
 
――キャラクターづくりには、何かルールを決めたりしたのでしょうか?
松原:  キャラクターの傾向としては、3種類くらいに大別できます。カートゥーン系と普通に描ける系と、その中間と……。でも、幕の内弁当みたいになって来ちゃって。カートゥーン風のデザインで徹底できればよかったんですが、どうしても表情や感情など微妙なニュアンスが必要になってきて、どうしても描き分けやすい方向にいきがちですね。
前田:  ドラマ寄りにしので、「ねずみ男」とか用意したカートゥーン系がだんだん使えなくなってきましたね。なんとか暗躍シーンで出したいとは思ってるんですが。
 
――最初に前田さんが描かれたキャラクターは?
前田:  アルベールが主人公ではなく、モンテ・クリスト伯爵中心で進めてたので、やはり伯爵からですね。原作で容姿を細かくはっきりと描いてあるキャラは、実は伯爵だけなんですよ。さっきも話題に出たようにシルエットを立たせることに留意しまして、色も顔を真っ青にしてみるとか、キャラの作り方としては普段やらない方法でやってみようと思ったんです。
 たとえば欧米のアニメーション作品だと「悪役はこういう目の形」とはっきりした記号の組み合わせでできあがっていますが、それを真似しても仕方ないのでずいぶん変えています。影をつけないかわりに輪郭線を全部色トレスにするなど試みてますが、主線を太くすると今度は処理が大変で、試行錯誤しながら作っていますね。
 
――伯爵のキャラクターのイメージは原作からでしょうか。
前田:  物語は大きく翻案していますが、やはり原作がある以上、そこから大きくははずさないようにしつつ、「原作を自分はこう読んだ」という印象を出すようにしています。原作のデュマは当時のヒロイックな詩人バイロンを明らかに強く意識していて、文中にも詩の引用があることに注目しました。バイロンの周りには『フランケンシュタイン』のシェリー夫人がいて、後にブラム・ストーカーの『ドラキュラ』のルーツになる『吸血鬼』の構想もバイロンが書いていて、彼らがゴシックホラーの文化を生んでいくわけですが、その辺のイメージをデュマはきっと拝借したんだと思ったんです。確かに原作を読めば読むほど伯爵はドラキュラっぽいんで、直球勝負でやってもいいかなと。顔が青いのも、耳がとがってるのも、もとは人間だったけどすでに異世界の者だという印ですね。
 
――松原さんは、前田さんの原案をどんな風に解釈されてデザインしていますか?
松原:  真宏さんが描いて見せてくれるキャラ原案って、とにかく全員が悪そうに見えるんですよ(笑)。目はつり上がってるし、口もとも意味ありげで、典型的な悪役顔なんですね。僕はそれを鵜呑みにして描くんだけど、たまに不安になって「この人って悪い人ですよね?」って聞くんです。すると、「いや、悪くない悪くない。小心者でいい人なんだよ」とか「悪いことしちゃったけど心は正義なんだ」とか、そういうことを言われて、混乱して「ええっーー!」となるわけですね(笑)。
 でも、僕は原作の細かい内容を知らないのをいいことに、あえて誤解しているかもしれない部分を前面に出すようにしています。たとえばメルセデスは多分こういう人ではないと思うんですが、僕が無理矢理「こういう面もあるだろう」ともっていったところがあります。性格的なことって時間や環境とともに変わっていくはずですよね。だから、昔はいろんな陽気な面をもつお姉ちゃんだったのに、今は将軍夫人まできてしまったということは、きっとピュアなことだけでは済まなかっただろうと、そういう皮肉な部分も絵にこめているんです。
 
(インタビュー構成:氷川竜介)
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