| 第3回 |
何かを企む伯爵の顔つきだまそうとする優しい表情に着目 |
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| ――女性キャラの衣装もファッショナブルですね。 |
| 松原: |
衣裳の傾向はキャラごとに変えてます。前田さんが描いてないものに関しては特にそうで、3つくらい描いては前田さんに選んでもらうようにしています。「どんな人なの?」という話はよく聞くようにして、イメージはファッション誌などを参考にしましたが、シルエットだけ活かすようにしています。特に新世代の子たちに関しては、なるべくラインの出る服を考えてます。 |
| 前田: |
松原くんって、魂だけで描きあげるタイプのデザイナーじゃなくて、こんな風にわりと客観的・分析的に描いているんですよね。 |
| 松原: |
とにかく真宏さんの原案を見て、何かに似たキャラクターだけはやめようと言ってたんです。そうしたら「それって自分を追いつめるだけだよ」って止められたんですが、正直、僕としては美形にもかわいいキャラにもしたくないんです。極端な話、絵そのものはブロマイドにしても売れない絵にしたいと思ってるくらいです。あくまでもお話のなかで活きてくれればいいわけで、だったら少々ダサイほうがいいんじゃないかって、ずっと考えてました。センスがよくてかっこいいキャラだけというのは、自分の中で違うなあと思ってました。 |
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| ――松原さん的な見どころはどこでしょうか。 |
| 松原: |
伯爵の復讐のやり方が結構せこいのがミソですね(笑)。宇宙までも行けるのに、直接手を汚さないですから。逆にアルベールは少年らしい真っすぐさをもっているし、フランツは兄貴ぶんを自負してる。そういう対比が面白いです。ただ、アルベールって描きにくいんですよ。精神的には子供なんだけど、身体は大人になっちゃってるので。これで15歳かよって思うほど、ものすごくアンバランスで。 |
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| ――キャラの頭身も高いですよね。 |
| 前田: |
テレビアニメでは画期的でしょう。 |
| 松原: |
最近キャラ表と違って、だいぶ肉感的になってきたかもしれませんね。画面で描くと変わっちゃうんですよ。デザインしてるときと何かを表現しなくちゃいけないときの画作りは、どうしても変わってくるんです。デザインがあっさりしている分、各話作監の解釈もだいぶ違ってくると思います。 |
| 前田: |
3話のアルベールなんて、だいぶ大人に見えてかっこよかったしね。 |
| 松原: |
例えば2話の伯爵ってすごい目つきが悪者で、かっこいいんですよ。でも僕は少年たちをだまくらかそう、懐柔しようとするときの伯爵のいい人ぶった顔が描きやすいです。 |
| 前田: |
1話なんか特にそうだよね。 |
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| ――最後に、放映に向けての注目ポイントなどをお願いできますか。 |
| 前田: |
やっぱり伯爵でしょう。どこから見ても、何か企んでるんだろうっていう感じですから(笑)。みんなをかき回すトリックスターの役どころで、それをまたいちいち真に受けるアルベールも見どころです(笑)。 |
| 松原: |
20年ぐらい経って、伯爵が自分の怒りにまかせてアルベールの親父たちをやっつけに来るわけですが、その同じ時間を過ごしてきた若者たちがいるわけですよ。でも伯爵の目はそこにいかず、親たちに復讐を遂げることで若者たちも壊していくわけです。今度は壊された若者たちが、また20年後には同じように壊れた大人たちになっていくのか、違ういい大人になってるのか、僕自身も最後まで見とどけてみたいですね。 |
| 前田: |
そのへんも踏まえて、ラストの終わらせ方には注目してもらえればと思います。 |
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| ――乞御期待!というところですね。ありがとうございました。 |
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<まとめ>
「味のあるキャラクターが”毒”に変わるとき…」 |
| 元来、アニメーションのキャラクターとは多人数で作業をするために簡略化される中で個性を発露するもの。『巌窟王』のキャラデザインは、影やハイライトに頼らず、力強いフォルムと誇張によって、そのキャラの背負った人生観まで余さず絵に封じ込めている。その微妙な美醜のブレンドは、ドラマと美術に作用して、心を痺れさせる「毒」になっていきそうな予感がする。その「毒の予感」を楽しみに今後のキャラクターを追ってみたい。 |
| (インタビュー構成:氷川竜介) |
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