| 第2回 |
時代が変わっても人は変わらない 普遍的な人の悩みを盛り込んだストーリー |
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| ――現代と原作の書かれた19世紀の時代設定の差は、どうとらえましたか。 |
| 高橋: |
アルベール視点としたことで、だいぶ現代っぽくなったと思います。でも、それは今風に作りましたという意味ではなく、古典のなかの若者らしさは、今も昔も変わらない、普遍性があるからだと思うんですね。 |
| 神山: |
原作はナポレオン時代が終わって王政復古になった時代ですが、その前の偉大な時代を知ってる世代との対立みたいなものもあって、微妙に今の時代と通じるところがあるんです。揺れ動く社会背景があって資産家が台頭してそれまでのルールが通用しなくなりつつある時代、つまり人間の欲望が見えやすい時代です。原作も大衆小説で当時のリアルな世相が反映されているんですが、放り込まれてる題材は少しも古びていなく、今でもリアルなものばかりです。金や名誉、セクシャルな物事やドラッグ、バイオレンスも、当時なりの遠回しの表現の中に隠されています。それを未来に置き換えたことで、改めて影のテーマが浮かびあがってくるように感じましたね。 |
| 前田: |
逆に現代のお金、政治、経済を描いていくと生々しすぎると思うんです。それも古典というフィルターを通したことにより、ネイティブで単純なものが際立ち、ストーリーにうまくはまりましたね |
| 神山: |
世界観とストーリー、人物像がいい感じのバランスに仕上がってきてる気がします |
| 前田: |
若者たちの人間関係も現代風に変えてはいますが、車に乗ってハイキングとか、そういう行動は昔の太陽族に近いんです。それも古典を通すことで恥ずかしくなく、貴族の子どもなりの悩みを描けるんですね。 |
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| ――歴史は繰り返すということでしょうか |
| 前田: |
それは根底にあります。結局、ここにはないものをファンタジー、あるいは物語として夢見るということは、とりもなおさず人間自身は変わらないということです。状況やテクノロジーは変わりますが、人間の本質みたいなものは、実は進化も上昇もせずに、案外フラットで変わらないんだと思いますね。 |
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| ――山下さんは、どういうかたちで脚本づくりに参加されましたか? |
| 山下: |
僕はすこし違って、いちばん最初の3人くらいで進めていた時期から知っているんですが。最初の企画が「男」「SF」だったので神山さんを連れてきたことで、ものすごい苦労を強いてしまって申し訳ないです(笑)。次第に「昼メロのドロドロ感も入れたいよね」とか話してどんどん放り込んでていったら、女性が観られないような激しい内容になっていったので(笑)、どこかでブレーキを踏もうと高橋さんをはじめ女性スタッフが増えていったりしました。 |
| 前田: |
最初はSFということで、いろんなことを考えてたんですよ。原作も英仏戦争を背景にしたロスチャイルド家が勃興した時代を反映してるので、超高速で移動が可能になったときの経済の話を入れようとか。でも、そんなの絵になるわけないって(笑)、ダメでした。やはり「復讐される男」と「復讐する男」の対称関係が中心で、そこから周りの人が巻き込まれていく昼メロ的構図がいちばん面白いんですよ。ですから、宇宙空間を飛び回ったりテレポーテーションしたり、そういうネタは落ちていきました。 |
| 神山: |
主人公が真逆の位置にいる人物に変わったことで、「昔の恋人」だったポジションが「お母さん」に変わったわけだから、その辺りのダイナミックな変貌ぶりも見所のひとつですね。 |
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| (インタビュー構成:氷川竜介) |
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